このコーナーは関西在住の女性ライター・法善寺灯子さんに関西のシニアの皆様の魅力を語っていただくものです。関西流の笑いと人情味溢れるシニアの生き様はきっとこの世知辛い浮世に一筋の光を与えてくれるでしょう。関西のオジ様とオバ様とお爺さまとお婆さまと、おとんとおかんのパワーが皆様の健康とご長寿の活力になることを切に願います。

編集長

【針小棒大「関西シニアの正月の価値観」の巻】

　もう12月も末。さすがに「師匠が走る」というだけある。時が立つのが早い！

　この時期、恐ろしいのが母親の「正月準備」である。戦争を乗り越え、高度成長期とバブルを経験した80代の「冠婚葬祭」の価値観は本当に恐ろしい。金をかければいい、いや、金をかけなきゃならん、ケチったらバチが当たるという感覚が、景気がどんなに悪くなっても抜けない！

　特に関西は商売の町だからゲンを担ぎまくる。あらゆる行動やアイテムに意味を持たせるのはいいが、そこから外れると本気でビビり「この常識はずれが…」という目で睨まれる。

うちの母なんぞその最たるもの。以前初詣に行った際、私がおみくじを読んだあと、丸めてゴミ箱にポイと捨てたら、「キィーッ！　ばばばバチあたりがッ、すぐ拾え！！」と、周りに人が大勢いる中、頭をバッシ―ッと叩かれたことがあった。アレがトラウマとなり、今じゃ心で「ただの印刷物なのに」とブツブツ思いながらも木にくくっている。

さて、そんな母と毎年ケンカになるのは「おせち」問題である。母は「縁起がいい」という理由だけで、百貨店の、何人前ですねんと言いたくなるような、ン万円の豪華おせち料理を予約しようとするのだ！　たった２人なのに！

いらんいらんいらん（汗）。コロナでこの先どうなるかもわからないし、正月という数日間で終わるイベントに大金出したくない。しかも消えモノに！　

買うとしても１万円以下のにしようよ、と言うと、まさかの真顔でこう言われた。

「２万円以下のおせちなんて、この世のどこにも売ってません（キッパリ）」

　アンタどんな世界に住んでるんですかーッ！　あまりの大ウソに

「私の住んでる世界ではそこらにゴロゴロ売ってます！」

と震える声で言い返す私。　

「売ってません！」「売ってる！」「売ってへん！」という、あまりにも無駄なやりとりを数回繰り返し、最後には

「正月にケチるなんて、アンタ来年エエ事ないで！　知らんで！」

と捨て台詞を吐かれてしまった。

ダメだ。母に何を言っても通じない。私は神様仏様にこう聞くしかなかった。オーマイガッドにブッダ！　正月にケチるってそんなに悪い事ですかぃ！？　と……。

なんと毎年、この攻防戦が繰り広げられるのである。そして結局、母の望み通り、かなりエエ値段のおせちが食卓に並ぶのである。とほほほ。

【法善寺灯子さんのプロフィール】

関西在住ライター。性別：女性。好物は串カツとお好み焼きのブタ玉。兵庫、大阪、京都、奈良、三重、滋賀などフットワーク軽く駆け回り、愛すべき関西の面白ネタを探す。