このコーナーは関西在住の女性ライター・法善寺灯子さんに関西のシニアの皆様の魅力を語っていただくものです。関西流の笑いと人情味溢れるシニアの生き様はきっとこの世知辛い浮世に一筋の光を与えてくれるでしょう。関西のオジ様とオバ様とお爺さまとお婆さまと、おとんとおかんのパワーが皆様の健康とご長寿の活力になることを切に願います。

編集長

【関西シニア通信】第17回：パニック！「大阪都構想は桃色吐息」の巻

　11月1日。この日なんの日。一が並んだめでたい日。そして大阪ではガッツリ「大阪都構想選挙の日」でした……。。

　都構想、どうなるどうなる。大阪市がなくなるのか？　スーパーでオッサンオバハンと顔を合わせたら話題になり、街で反対やら賛成やら熱く語られたチラシをもらい。大阪市民ではなく、政治に疎い私ですらドキドキした。そして、この都構想の話をきっかけに、思わぬ別の事件が勃発したのである。

　10月末、父の月命日でお坊さんが来た際、自然と大阪都構想の話になった。

「もう大阪市民は大変ですよね。こんな時期に」

と苦笑いしている。　

そして、

「もちろん、先のことを考えなアカンのはわかるんですけど、それより今をどう乗り切るかを先に考えなあかんのちゃいますかね。私の知っている食べ物屋さんはコロナ禍で、どこも今日明日で必死。『このままじゃ店潰れる』言うて桃色吐息ついてますわ……」

　とつらそうな顔をした。母も顔をしかめ「やっぱりどこもそうですか」と頷いたが、私は聞き逃さなかった。

　ももも、桃色吐息って言ったよね？ 正解は「青息吐息」ですよね？　すごい重要な部分を間違えてた気がするけど、エッ、私の聞き間違い？　

　母に必死で目配せするが、母はまったく気がついていない。それどころか、

「分かりますわ……。私の知り合いも黒門市場で店してますけど、やっぱり桃色吐息で」

　オカン、無意識につられてるーッ！　いやいやちょっと！　2人とも気づいて。 青！ 青！　ピーチじゃなくブルーッ。青息吐息だから！！

　私は口を抑えた。笑いたい。が、ここで笑ってはいけない。社会人として。必死で顔をしかめてこらえていると。なんと坊さんがわっはっはと笑い、

「桃色吐息は歌謡曲ですよ。青ですよ。青息吐息ですよ！　まあ言葉似てますよね」

　と母に指摘したのである！

　私は思わず坊さんを５度見くらいしてしまった。いやオカンの前にアンタが間違ってたから！ 母が真っ赤になり「いややわー私ってばもう。失礼しました」と頬を抑えているが、気の毒過ぎるもらい事故……。そのあと坊さんと母は都構想の話で盛り上がっていたが、私は母が気の毒過ぎてまったく頭に入ってこなかった。

　私は今後、都構想の話を聞いたら、自動的に桃色吐息と青息吐息を思い出すことになるのだろう。うおお！

【法善寺灯子さんのプロフィール】

関西在住ライター。性別：女性。好物は串カツとお好み焼きのブタ玉。兵庫、大阪、京都、奈良、三重、滋賀などフットワーク軽く駆け回り、愛すべき関西の面白ネタを探す。