Catch Up
キャッチアップ

このコーナーは官能小説家の長月猛夫氏が一般の中高年男性から寄せられた「性の告白」をご紹介するものです。そこにはシニアである我々同世代が共鳴する「あの頃」の時代背景があり、実体験ならではの生々しい「性の現実」があります。懐かしくも妖艶な古き良き官能の世界をご賞味いただければ幸いです。 編集長
【お礼に肉体をくれた人妻】奈良県在住A・Yさん(59歳)
その男は近所でも乱暴者で有名だった。この話の1年ほど前に越してきて、仕事を持たず、昼間から酒を飲み、酔っ払ってはクダをまく町内の鼻つまみものだった。
そんな男を支えていたのがR子さんだった。
どういう経緯があって結婚したのかは知らないが、清楚で細面のR子さんは、越してきた早々から、近所でも評判の美人だった。
わたしは大学2回生だった。その日、両親は法事か何かで家を空けていて、わたしは一人で留守番をしていた。
サクラの花も満開に近い、生暖かな夜だった。
家でテレビを見ていたのか、本を読んでいたのか忘れたが、わたしは窓を開けてくつろいでいた。そのとき派手な物音がし、同時に女性の悲鳴がひびいた。
その声はR子さんのものだとすぐにわかった。
わたしの家とR子さんの住む平屋建ての長屋は裏と表の位置にあり、わたしの家の2階からはR子さんの家が庭をとおしてよく見えた。
わたしはあわてて2階に上がり、R子さんの家をのぞく。すると、仁王立ちになった男がR子さんを蹴飛ばしている姿が見えた。
R子さんは手入れのされていない庭に転がり、許しをこている。
「危ない!」
とっさにそう思ったわたしは階段を駆けおり、玄関から家を飛び出すと、R子さんの家に駆けつけ、中に飛び込む。
男はいきなり姿を見せたわたしに驚き、振り返る。
「なんやお前は!」
「なんもかんもあるかえ! 女、足蹴にするやなんて、最低の男のするこっちゃ!」
「ガキのお前には関係ないやろ!」
男はわたしに食ってかかってくる。しかし、腕に自信のあったわたしは、男を逆に投げ飛ばした。
男はあっけなく畳の上に転がり、腰をさする。
「な、なにすんねんなぁ……」
「先に手ぇ出してきたんはお前やろ!」
わたしは興奮をしずめ、R子さんを見る。庭からわたしたちのようすをながめていたR子さんは、軽く頭をさげた。
次の日の午後、ぼんやりと一人で時間をつぶしていたわたしの家を、R子さんが訪ねてきた。
「きのうは危ないとこ、ありがとうございました」
「いえ、気を使わずに」
「お父さんとお母さんはお留守?」
「ええ、きのうから家を空けてます」
「ほな、今は一人」
そのときR子さんの目に、なにやら淫靡な影が差す。
「あがらしてもうても、かめへん?」
「え、はい……」
わたしは少し怪訝に思いながら、R子さんを応接間にとおした。
「ほんま、きのうは怖かった。あんなに怒られるやなんて思えへんかった」
ソファーに腰をおろしたR子さんはいう。
「そやけど、なんで?」
「虫の居所、悪かったんやろうなぁ。今月の家賃、どないしょうってもらしたら急に」
「いや、なんであんな男と一緒になりはったんですか?」
「あの人、ああ見えても腕のええ板前やったんよ。そやけど悪い友達にだまされて、借金かかえて。ほんでこの町に逃げてきたん。それから毎日、酒びたりになってしもて」
R子さんはため息をつく。
「ごめんな、しょうもない話して。ほんまは菓子折りでも持ってこなアカンねんけど……」
「そんなん、気ぃ使わんといてください」
「ほんま、ちゃんとお礼せぇなアカンのやけど、ウチが、いまできるんは……」
R子さんはそういって立ちあがり、わたしのとなりに席を移す。
「お父さんとお母さんの帰りは遅いん?」
「夜までは、たぶん……」
「ほな、じゅうぶん時間あるね」
R子さんはそういって、着ていたワンピースを脱ぎはじめる。
「ちょ、ちょっと!」
「これくらいしかでけへんから、粗末な身体やけど」
「いえ、それは……」
「ウチみたいな女、きらい?」
「いえ、それとこれとは話が別」
わたしはうろたえる。けれどR子さんはさっさと服を脱ぎ捨て、下着姿になる。
化粧は薄く、長く伸ばした髪をひとつに束ね、身につけていた下着も白一色の木綿地。薄幸を絵に描いたような姿だが、素肌には艶があり、乳房もじゅうぶんにみのっている。
わたしは、R子さんの裸体を目の当たりにして言葉をなくした。そんなわたしを見つめながら、R子さんは髪をとき、ブラジャーとパンティを脱ぐ。
全裸になった瞬間、R子さんのイメージは変わった。
そこにあるのは完璧に近い女性の肉体であり、普段の生活からとき放たれた妖艶さに満ちあふれている。
「ウチみたいないやらしい女、きらい?」
わたしは首を横に振っていた。若い肉欲が股間に集中し、ズボンの上からでもわかるほど一物はそそり立っている。
R子さんは床の上にひざまずき、わたしのズボンとパンツをおろした。そして露出した肉棒を見て目を丸くする。
「すごい、大きい」
R子さんは舌なめずりをし、わたしを咥えた。
女を抱いた経験はあっても、口での愛撫は初めてだった。わたしはR子さんの温かさとなめらかさ、そしてまとわりつく舌の動きに、早くも精液をほとばしらせてしまう。
「う、うん! くん」
突然、勢いづいてあふれ出た液に、R子さんは驚きをあらわにする。それでも最後の1滴まで受け止め、残り汁も搾り取ると、喉を鳴らして飲み込んでくれた。
「うん、おいしい」
淫靡な表情でわたしを見あげるR子さん。そこには、身を粉にして夫を支え、乱暴な振る舞いにも耐え、かいがいしくつくす良妻の姿はない。
若い男を誘惑し、自分の劣情を満たそうとするメスと化していた。
「若いんやから、すぐに元気になるよね」
R子さんはそういってわたしに身体をあずけ、唇を重ねてくる。右手でしなびはじめた一物を握り、上下にこする。
わたしの手を、もう左の手が乳房に誘う。手のひらにあまるボリュームと、スベスベした質感と、やわらかな感触が伝わってくる。
R子さんの手の中でわたしは復活を果たした。
「すごい、固い、大きい」
うわ言のようにそういって、R子さんはわたしの服を脱がした。
「もう、我慢でけへん、見といてな、ウチの中に入るのん、見といてな」
ソファーに座ったままのわたしを見つめ、見せつけるように脚を開き、またがってくる。そして屹立した一物を濡れた部分にあてがい、中へと導いた。
奥までめり込むわたしの肉棒。
R子さんの内部はウネウネと蠢き、わたし全体をおおいつくす。小さな肉粒がぜん動をくり返し、蜜があふれて染みついてくる。
「もう、メチャクチャにして、いろんなこと、忘れたい、もう、いやなこと全部、忘れさせて!」
R子さんはわたしに抱きつき、唇を吸いながら腰を振った。わたしは陶然となりながら、R子さんにすべてをゆだねる。
乳房を揺らし、髪を乱しながらR子さんは悶え、喘ぐ。わたしは股間でR子さんの圧力とぬるみを感じ取り、乳房を揉んで乳首を吸う。
「やああん、そう、そこ、気持ちいい!」
R子さんは絶叫した。それと同時に蜜の量が増え、わたしの股間も濡らす。
夢中になったわたしは、R子さんを下から突きあげ、膣の一番深いところまでえぐっていく。
子宮の入り口まで達する貫きを、R子さんは唇をかみ締めて感じ取り、腰を上下前後に揺らす。
わたしはR子さんの中を攪拌しながら、頂点を感じはじめていた。艶然とした表情を浮かべるR子さんを見つめ、ふたたびの射精をこらえる。
だが、我慢も限界に達し、そのことをR子さんに告げる。
「ボク、もう……」
「ええよ、出してもええよ、ウチも、もう……!」
「ど、どこに……」
「このまま、このまま出して、中に」
「それは……」
「ええの、出して、熱いのいっぱい出して」
「そやけど……」
「ええの、あああん、もう、ウ、ウチもイク!」
R子さんは、よりわたしに密着する。危ないと思ってみても、R子さんを離し、抜き取ることはできない。
R子さんの動きが激しくなる。わたしはとうとう限界を超え、そのまま中に吐き出したのだった。
その後、両親の留守を見計らって、R子さんはわたしの家を訪ねてくるようになった。けれど、別れは突然、訪れた。
R子さんと男の家を債鬼が探し当て、大声をあげて返済を迫る。それが数日続いたあと、男とR子さんは姿を消した。
その後、彼女がどうなったのかはわからない。R子さんが暮らしていた長屋も、今は小ぎれいなマンションになった。
大学を卒業して、しばらくは東京で暮らしていたわたしだが、父親が亡くなったのを機に奈良へ戻ってきた。
若いときに味わった甘美な体験。もちろん、このことは誰にも話していない。
- 【選者紹介】
- 長月タケオ(ながつきたけお)
- 官能小説家。一般人の中高年男性への取材を通して市井の赤裸々な性のエピソードを紡ぐ。
- 1962年生大阪府出身在住。1988年官能小説誌への投稿でデビュー。
- 1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作受賞。
- おもな著作『ひとみ煌めきの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)
- 『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)
- 『禁断の熟女』(ベストロマン文庫・共著)
- 『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)
- 『誘惑する女 熟女たちの悦楽』(九月堂・電子版)ほか
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- 誘惑する女 熟女たちの悦楽 長月タケオ短編集
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