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【昭和官能エレジー】第46回「文通セックスの結末」長月猛夫

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【昭和官能エレジー】第46回「文通セックスの結末」長月猛夫

この官能小説は、現在50代から60代の方々の若かりし時代を舞台背景にしています。貧しかったけれど希望に満ち溢れていたあの頃、そこには切なくも妖しい男と女の物語が今よりも数多く存在しました。人と人とが巡り合う一瞬の奇跡、そこから紡がれる摩訶不思議な性の世界をお楽しみください。 編集長

【文通セックスの結末】長月猛夫

【あなたの太くて固いオチンチンを舌の先でくすぐるの。するとグングン大きくなって、先からお汁がにじみ出てくるの。わたしは、それを舌でぬぐってキレイにして、それから大きく唇を開いてお口の中に……】

 美奈子からの手紙は、そんな卑猥な言葉で埋めつくされていた。

 梶原と美奈子と手紙の交換をはじめたのは、とある雑誌の文通コーナーだ。

雑誌は大人の交際を目的としたもので、まじめに結婚相手を探している読者もいたが、なかには不倫や肉体関係のみの相手、もしくは手紙だけでの交際を求めている投稿もあった。

梶原は、美奈子と文通をはじめる半年前に離婚していた。3歳の娘と5歳の息子は、妻が連れて行った。

かわいい盛りの子どもたちを手放し、梶原は落胆を感じていた。

休みの日には公園や遊園地で遊び、誕生日やクリスマスには4人でテーブルを囲んでケーキにロウソクをともす。

そのころは当たり前だと思っていた日常は、もはや二度と舞い戻ってくることはない。

半面、ふたたび独身に戻った梶原は、一人暮らしを満喫しようとしていた。だれはばかることなく夜の街にくり出し、風俗店にも足をはこぶ。

だが時がたつにつれ、明かりの灯っていない家に戻るわびしさが募ってくる。

一緒に暮らしてほしいとはいわない。せめて、話し相手になってほしい。そんな女性がほしい。

スナックやキャバレーのホステスも、世間話にはつき合ってくれる。だが彼女たちは、あくまでも仕事のうえでの会話でしかない。梶原が店を出ていけば、ほかの客の相手をする。

そんなふうに考えるとむなしさが募る。

だれかを独占したいわけでもない。いや、自分だけのものにしたい女性があらわれれば、それも考えてしまうだろう。

しかし、いまはとにかく、自分を特別な男だと認識してくれる相手がほしい。

 そんなことを思っているとき、書店で見つけたのが交際雑誌だった。

【まずは文通からはじめてくださるかたを募集します。申し訳ございませんが、お返事はお一人だけとさせていただきます】

 美奈子の投稿には、そう記されていた。

 年齢は32歳。梶原よりも3つ年下だ。身長158、中肉中背。バストサイズは85センチとある。

「ほう」

 年齢はともかく、スタイルに特段目立つ点はない。だが、ありきたりな表現が、美奈子という女性の素直さをあらわしている。

 梶原は、そう思ってしまう。

「文通から、ということは、そのあとに会える可能性もあるということか」

 すぐに会いたい、とのアピールがないところも好感が持てた。会うことを前提としている投稿は、カネ目的かサクラである可能性が高いに違いない。

「イチかバチか試してみるか」

 梶原は久しぶりにペンをとり、便せんに向かって文字を書きはじめたのだった。

 自分の身の上や特徴を何度も書き直し、封筒に入れて梶原はポストに投函した。

 宛先は雑誌を発行する出版社。そこから投稿者に転送される。受け取った相手は、気に入った応募者に書いた返事を出版社に送付。投稿者の住所が記された手紙は出版社から応募者に転送され、あとはご自由に、というシステムだ。

ウメの花が咲きそろうころに、梶原は手紙を出した。すぐに返事は来ない。

やがてジンチョウゲの濃厚な香りが漂うころになる。返事は届かない。

「無理か。まあ、そうだろうな」

 最初のころは、毎日ワクワクしながら手紙を待った梶原だが、次第にそんな気持ちも薄れてくる。

 そして、サクラのつぼみがふくらみ、花がちらほらと咲きはじめる季節となった。

「あ……」

 仕事から戻ってきて、郵便受けをのぞいた梶原は小さな声をあげた。そこには電気代や電話代の請求書に交じって、一通の封筒が収まっていた。

 梶原は宛名を見る。封筒の裏には珍しい名字と「美奈子」という名が記されてある。その場で封筒を開けようかとも考えたが、まずは部屋に戻ってゆっくりと、と梶原は考え直した。

 封筒は、薄い水色のグラデーションで染められていた。封を開けると2つ折りにされた便せんが入っている。

 梶原は、はやる心をおさえつつ開いてみる。封筒と同じ色の便せんには、せせらぎのような筆跡で、まずは時候のあいさつ、そして自己紹介とつづいて記されている。

 そのあとに、梶原に対して返事を出した理由となっていた。

【達筆な文面、そして焦りのない内容に、お人柄を拝察いたしました。私でよければ、お手紙の交換をお願いできますでしょうか】

「小学校から中学まで、習字を習っていたかいがあったぜ」

 梶原はほくそ笑む。

【ただし、すぐにお会いすることは出来かねます。それさえ守っていただければ、お手紙であれば、どんな内容でもお引き受けいたします】

「どんな内容でも? どういう意味だ」

 理解はできない。しかも、焦りがないのを気に入ったとある。会いたいがためにガツガツしてもしかたがないし、梶原のほうにしても美奈子が、どんな女なのかわからない。

「まずは当たりさわりのない範囲で」

 梶原は返事を書こうとする。だが、何を書いていいものか悩んで何度も首をひねり、頭をかいて白い便せんをにらみつけた。

 どうにかこうにか書きつづり、梶原は投かんする。返事が届いたのは1週間後。すぐに返事を書いて、また1週間してから返事を送る。

 梶原は自分のことをいつわらずに記した。妻が出て行って、いまは独身であること。仕事も平凡なサラリーマンの外交員であること。そして、これまで前の妻のほかにつき合った女性がいないので、さほどハンサムでもないこと、などなど。

それが功を奏した。

【あなたは正直な人ですね。手紙の内容で、それがわかります】

 美奈子は、少なからず好意を持ってくれたようだった。

 サクラも盛りを過ぎ、モモの花も時期を終え、バラやクチナシの季節になる。

 相変わらず梶原は美奈子からの手紙を待ち、家に届くと、その日のうちに返事を書く。

 ただ、その内容は、次第に淫靡なものに変わりつつあった。

 互いの身の上を書いても、ネタはすぐにつきる。日頃の出来事といっても、互いに大きな変化はない。

「手紙なら、なんでもいいって最初にいってたな」

 梶原は思い切って、美奈子の性遍歴についてたずねてみた。

 しかし、最初からあからさまなことを聞けない。呼び水のために、まずは自分のことを書く。

「きちんとつき合ったのは別れた妻だけ。けれど、最初は高校生のときでした。相手はプロでしたけどね」

 これで途絶えてしまっても、しょうがない。

最初の目的は話し相手だったが、文通をくり返しているうちに、もう一歩踏み込んだ関係を望むようになる。それが、たとえ見知らぬ間柄であっても。

 すると、美奈子は、自身の経験について書いてきた。

【わたしもそれくらいでした。最初はつき合っていた男の子……、ではなく別の同級生。彼氏はいましたけれど、臆病な男の子だったから】

「おいおい、高校生で浮気か」

 美奈子は、その同級生と身体だけの関係をつづけ、それがバレて彼氏とは別れたという。

【初めての男の子は、上手じゃなかったけれど激しくて。それこそ、毎日のように彼の家で。それで目覚めてしまったのかもしれません。彼氏と別れると、ほかの男の子ともセックスするようになって】

 美奈子が、あからさまな言葉を記したのは、それが最初だった。

 文通をくり返しているうちに、敬語だった美奈子の文面が、夏も盛りになるころはなれなれしいものに変わりつつあった。それに比例して、美奈子の文面も過激になりつつある。

梶原は、手紙をとおしての妄想がふくらみ、美奈子の淫らな姿を思い浮かべては、自分を慰めてしまうこともしばしばとなった。

【さんざんしゃぶって、あなたは濃い、ねっとりとした精液を、わたしのお口の中にそそぎ込むの。それをコクリって飲んじゃう。のどを通って胃の中に入って、あなたの精子が消化されて、わたしの栄養になっていく。でも、それだけじゃ満足しない。わたしはまた、あなたのオチンチンを舐めて、元気にしてあげて。あなたは、すぐに大きくなって、今度は襲いかかってくれるの】

 キンモクセイが香るころ、美奈子の手紙は、まるで官能小説のように淫らになっていく。梶原も、わずかな文才をひねり出し、美奈子を凌辱する内容を送る。

「美奈子の白くて豊かな乳房をわしづかみにし、顔を押し当ててピンク色の乳首を舌で転がすんだ。興奮した美奈子は甲高い声をあげて悶え、オレをきつく抱きしめる。オレは美奈子のオ×ンコに手を伸ばす。美奈子のいやらしい部分は、すでにビチョビチョで、オレが指を入れてかき混ぜたら、どんどんいやらしい汁があふれてくる」

 美奈子の顔は知らない。写真を送ってもらおうかとも考えたが、それで文通が終わってしまうかもしれないし、思い描いていた姿や面立ちとかけ離れているかもしれない。

 落胆してしまうのなら、いまのままがいい。

「けれどな……」

 会おうとはいわない。それも写真と同じ理由だ。しかし手紙だけでは、やはり物足りない。

「せめて声を」

 現状は、テレフォンセックスならぬレターセックスだ。

美奈子の文章は、梶原の興奮をあおるのに十分すぎる表現に満ちている。だが、本を読むことも新聞を読むのも苦手で、文章なんか学校の授業で作文や感想文を書いた程度しかない梶原だ。おのずと限度がみえてくる。

 梶原は思い切って手紙に書いた。

「電話で声を聞かせてもらっていいですか」

 通常なら1週間、おそくても10日で届いていた返事が、2週間待っても送られてこなかった。

 美奈子の機嫌を悪くしてしまったのか。やはり、手紙だけの関係でいたほうがよかったのか。

 梶原は後悔する。

「今までいい夢を見させてもらってありがとう……、か」 

 稀有な体験だった。文章で興奮するなんて、初めてのことでもあった。実物を知らないだけに、思い描く美奈子の姿は、自身の理想をすべて具象化したものになっていた。

「まあ、いま以上にエスカレートしてしまうのも問題があるし」

 そんなことを考えつつ、焦りすぎたかもしれない自分を省みる日々が1ヶ月過ぎた。

 美奈子からの手紙が届いたのは、花屋の店頭にシクラメンが並びはじめるころだった。

 拒絶の内容か、もしかしたら罵倒が記されているかもしれない。それとも現状維持の報せか。まさか、電話の承諾ではあるまい。

 そんなことを思いながら、梶原は震える手で封を開けた。

 いつものように水色の便せんが入っている。開いてみると、電話番号と時間帯が書いてある。

【平日のこの時間であれば大丈夫です】

 美奈子は、それだけを書き添えてあった。

「やった……」

 よろこびが心臓の鼓動を早くする。今すぐにでも電話をかけたい衝動に駆られる。

 だが、美奈子の指定した時間は、午前10時から午後2時まで。梶原が手紙を確認したのは、午後の7時だ。

「明日の朝なら」

 翌日、梶原は体調が悪いといつわって仕事を休んだ。そして、午前10時すぎに居間においてある電話のダイヤルをまわす。

 心臓が苦しいほどに高鳴っている。受話器を持つ手が震え、何度もつばを飲み込む。

トゥルル、トゥルルと呼び出し音が鳴る。しかし、電話は通じない。

「間違ったのかな?」

 梶原はいったん受話器をおいてかけなおす。しかし、結果は同じだ。

「まさか……」

 だまされたのか。もしくは美奈子が誤って違う番号を書いてしまったのか。

 手紙のやり取りをしているのだから、美奈子の住所は知っている。名字も珍しいものなので、電話帳で調べれば正しいものなのか、そうでないのかがわかる。

 美奈子が住んでいるのは、梶原のとなりの県だ。自分の家の電話帳には記載されていない。

「電話局に行けば」

 梶原は家を出て自転車に乗り、地域の電話局に急ぐ。そして、美奈子の住所を手がかりに、電話番号を確認した。

 番地までは記されていないが、町名がわかれば突き止めることが可能だ。梶原は分厚い電話帳をめくり、美奈子の電話番号を探した。

「あった」

 同じ名字の同じ電話番号が、そこには明記されていた。ただし、電話回線の契約者は美奈子本人ではなく、男の名前になっている。

「人妻なのか」

 とはいえ、男名義だからといって夫とは限らない。親と同居している可能性もある。そして、人妻だからといって臆する必要もない。どうせ声を聞くだけだ。浮気にはならない。

 美奈子の教えてくれた番号が誤りでないと知ると、梶原は急いで家に戻り電話の前に座る。そして緊張する手でダイヤルをまわす。

 呼び出し音が、1回、2回、3回、4回……。

「もしもし」

 少しかすれた女の声が受話器から聞こえた。

「もしもし、美奈子さんですか」

「……」

「ボクです、梶原です」

「はい……」

「電話番号、教えてくれてありがとうございます」

「いえ……」

「今は大丈夫ですか」

「はい……」

 美奈子は、今にも消え入りそうな声で返答する。

「感激です、声だけでも聴けて」

 ここまで一気に話す。だが、そのあとがつづかない。

 美奈子の声を聞きたい。梶原は熱望した。しかし、いざ現実になってしまうと、何を話していいのかがわからない。

「あ、あのう、いつもお手紙をありがとうございます」

「いいえ」

「美奈子さん、ボクのなにが……、その……」

「梶原さん」

「はい?」

「時間がないんです。あなたはわたしに何を求めてらっしゃるの?」

 美奈子の冷静な声が梶原の神経を惑わせる。

「何を、て……」

「電話までしてきて、わたしの声を聞いて、何をなさりたいの?」

「それは、別に……」

「うふふ」

 動揺している梶原を察したのか、美奈子は鼻にかかった笑い声をもらした。

「お手紙に書いていたようなこと、直接、わたしの口から聞きたい。そうでしょ」

「え……、まあ、はい……」

「よろしくてよ。わたしもそのつもりだったから」

「そのつもり?」

「そう、だから今は薄いネグリジェ姿。パンティははいているけど、ブラジャーはつけてないの」

 それがはじまりの合図だった。

「ねえ、梶原さんは、どんな格好?」

「え? いえ、ジーパンとトレーナー」

「やだ、早く脱いで。それとも、わたしが脱がしてあげましょうか」

「脱ぎます、すぐに脱ぎます」

「やだ、梶原さんのほうが年上なんだから、敬語はやめて」

 梶原は急いでズボンと下着をとった。

「どう? わたしの声を聞いて興奮してる?」

「は……、いや、うん、興奮してる」

「もうビンビンかしら」

「ああ、見せてやりたいくらいだ」

「わたしも興奮してる。乳首が立って、ネグリジェにこすれて痛いの。ほら」

 受話器の向こうで、なにやらゴソゴソという音がした。美奈子が乳首をこすりつけているのがわかる。

「梶原さん」

「はい……、いや、なんだ?」

「最初に、わたしにどうしてほしいの?」

「そうだなぁ、まずはフェラでいかせてくれ」

「わかった……、うん、梶原さんの大きい、でも元気がない。わたしが、美奈子が梶原さんのオチンチンを、もっと大きくしてあげる」

 ぴちゃぴちゃと唾液の音がする。美奈子は指をしゃぶって淫靡な音を立てているようだ。

耳に押し当てた受話器の向こうで、美奈子の赤い唇が開き、指に舌を絡ませている様子が浮かぶ。押さえつけられるもののない乳房は形を誇示し、とがった乳首が薄衣をとおして透けている。

そんな姿が、閉じたまぶたの裏にありありと映し出される。

「あああん、梶原さん、おいしい。うふふ、すごく熱くて固くなってきた。ねえ、わたしのも弄って」

 ゴソゴソと音がする。美奈子は股間に受話器を当てている。

「ど、どうだ、気持ちいいか。お前のオ×ンコ、もうビチョビチョじゃねえか」

「いやん、いやらしいこといわないで」

「いわなくていいのか?」

「うふふ、ウソ、もっといって。うん、梶原さん、気持ちいい? 美奈子のフェラ、じょうず?」

「ああ、じょうずだ」

 一物は美奈子の声だけで膨張し、完全な屹立を果たす。梶原は受話器を左手に持ち替え、右手で自分をしごく。

 美奈子の唾液の音は、激しく大きくなる。指だけでなく、直接、受話器を舐めているのかもしれない。

 梶原の手は、その動きが早くなる。

「うううん、うん、あん……、どう? イキそう? 我慢しないでイッていいのよ。美奈子が全部飲んであげる」

「ああ、イキそうだ、出る」

「出して、濃いの、熱いの、美奈子のお口に全部出して!」

 梶原は固く目を閉じ、美奈子の声に全神経を集中させる。脳裏には、自分の股間に顔を押し当てて頭を振る美奈子の姿がリアルに見える。

「ああ、出そうだ、出る、あ……」

 梶原は果てた。それを知った美奈子は、たまったツバを飲み込み、その音を梶原に聞かせたのだった。

 一度、射精した梶原だったが、ぺちゃぺちゃ、くちゅくちゅと鳴らす美奈子の粘った音を耳にしながらしおれた一物を弄っているうちに、徐々に力はよみがえる。

 それを告げると、美奈子はいった。

「全部、脱いじゃった。美奈子、恥ずかしい」

「恥ずかしいことなんかない。美奈子はきれいだ」

「本当に、そう思う」

「もちろん」

「うれしい」

 チュッというキスの音がする。

「キテ、美奈子の中にキテ」

「あ、ああ」

「うん、入ってきた。美奈子の中にあなたのおチンチンが入ってきた。やん、届くぅ、奥まで届いてる。いやん、気持ちいい」

 刹那、受話器から音が消える。次に聞こえてきたのは、ぐぢゅぐぢゅという粘膜のこすれる音色。

 美奈子は部分を弄り、その音を電話で伝えてくる。

「ふふふ、いやらしい。うん、気持ちいい。美奈子のアソコも気持ちいいって泣いてる」

 ささやきがうわずってくる。梶原は、握っている手のひらに力をこめる。業物は、すでに勃起を果たしている。

「やん、いい、ねえ、動いて。強く突いて」

「こ、こうか」

「あん、すごいの、固いの、熱い……、やん、もっと、もっと激しくして」

 白い肢体が波打つ。眉根にしわを寄せ、肉厚のある唇から舌を出し、美奈子は艶然とした表情を浮かべる。

 梶原が抜き差しをくり返すごとに、ほどよいボリュームの乳房がタプタプと揺れる。純白の肌が桃色に染まり、蠱惑的な香りが美奈子の昇華にともなって空気中に漂う。

 そのすべてを、梶原は感じ取っていた。現実ではないにせよ、確実に視覚、嗅覚、触覚が神経を鋭敏にする。

 肉棒を握っているのは自分の手だ。やわらかさもない、ごつごつとした男の手だ。

 にもかかわらず、膣肉のやわらかさ、温かさ、襞のぬめりが伝わってくる。

 夢想の挿入感が、梶原の陶酔を極致に誘う。

「いい、あああん、いい、すごいの、気持ちいいの。気持ちいい? ねえ、気持ちいい? 美奈子の中、美奈子のオ×ンコ、気持ちいい?」

「いい、美奈子は最高だ」

「うれしい……、やあああん、変になる、変になる、美奈子、もう、やあああん、だめぇ」

 肌に美奈子の質感と体温が染み込んでくるようだ。梶原の動きは激しく早くなる。

「美奈子、オレ、もう」

「イッちゃうの? いいよ、出していいわよ。あん、美奈子もイク。キテ、いっしょにキテ、やんやん、だめぇ、もう、イッちゃうううう!」

 美奈子は頂点を迎えた。同時に梶原もほとばしりを放った。

 美奈子との電話のやり取りは、その後もつづいた。だが、梶原が休みの土日祝日と夜間の連絡は禁じられている。

 梶原は美奈子との約束を守り、外回りの途中で自宅に戻ったり、ホテルに入ったりして電話をかけた。

 だが、美奈子と知り合って1年がたとうとしたとき、梶原は我慢の限界を知った。

 美奈子には、何度も会うことを打診した。しかし、美奈子は承諾しない。

 サザンカが味気ない冬の景色を彩り、ツバキの花が妖艶な花弁を開く。

 梶原はとうとう行動に移した。それは美奈子の住処を訪ねることだった。

 断られることは百も承知だ。それでも実物の美奈子を目に納めたい。

 妄想が膨張し、頭が破裂しそうだ。予想に反して、自分好みでなくてもいい。呼吸をし、体温があり、実態を持つ美奈子を確認したい。

 電車に乗って、美奈子の家の最寄り駅で降りる。不在だと意味がないので、公衆電話をかけて確認する。

「はい」

 美奈子はいた。梶原は何もいわずに電話を切る。

 不安と期待に苛まれながら、梶原は歩を進めた。

 美奈子の家は思っていた以上に駅から距離があり、到着したのは午後3時すぎ。梶原は瀟洒な一戸建ての表札を確認する。

「ここか」

 玄関先でたたずんでいた梶原は、意を決して前に一歩踏み出そうとした。

 そのときだった。

 幼稚園の制服に身を包んだ子どもが、梶原の横を通り抜けて美奈子の家の呼び鈴を押した。

「ママー、ただいま!」

 とっさに梶原は、その場を離れて遠くからようすを見守る。

 ドアが開き、一人の女性が姿を見せる。美奈子だ。

「お帰り、早かったのね」

「うん、これからアッちゃんちへ遊びに行く約束してるんだ」

「そうなの、じゃあ、早くお着換えしなきゃ」

 子どもは家の中に入る。慈しみの笑みを浮かべた美奈子は、静かにドアを閉じた。

 想像通り、いや、それ以上に美奈子は美しい女性だった。しかし、彼女は幼い子どもの母親だ。

 梶原にも家族があった。子どもとの幸福なひと時があった。

 無邪気な笑顔を見せ、完全な信頼を向けてくれる、何よりも大切な子どもたちがいた。

「そうだよな、彼女には守るものがあるんだ。ありがとう、いい夢見させてもらったよ」

 梶原は、その場を離れる。

 その後、梶原は美奈子に電話をかけない。美奈子からの手紙も、届いてはこなかった。

【長月猛夫プロフィール】
1988年官能小説誌への投稿でデビュー。1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作。主な著作『ひとみ煌きの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)/『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)/『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)ほか。

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