このコーナーは関西在住の女性ライター・法善寺灯子さんに関西のシニアの皆様の魅力を語っていただくものです。関西流の笑いと人情味溢れるシニアの生き様はきっとこの世知辛い浮世に一筋の光を与えてくれるでしょう。関西のオジ様とオバ様とお爺さまとお婆さまと、おとんとおかんのパワーが皆様の健康とご長寿の活力になることを切に願います。

編集長

【振り込め詐欺と親子の悲哀の巻 】

　年末年始のバタバタ時期、本当に本当に気を付けたいのが「詐欺」である。特に長引いたコロナ禍から少し抜けた気の緩みが出る今、要注意。シニアを狙うあくどい「オレオレ詐欺」……いや「母さん助けて詐欺」（←この名称慣れない）が横行する。最近では息子や娘を語るだけでなく、「アポ電」という在宅や貯金、家族のことを聞き出し、後日お金を要求するといった手口が横行しているのだそうだ。怖い！

「いやー、うちのオカンはしっかりしているから大丈夫」と笑っている方、いやいや、そうでもないらしい。一度オレオレ詐欺防止キャンペーンの取材をしたことがあるが、

「僕やけど悪いヤツにつかまってん。お金を払わないと大変なことになる」

的な、ボンヤリとした内容の電話ほど「なんだかわからないけど子どものピンチ」とパニックになり、

「え？　何？　マサオどうしたのッ」

などとポロッと子どもの名前を言ってしまう人が多いそうだ。謎の電話に子どもの名前を言わないよう、親御さんに注意しておこう。その電話で詐欺が成立しなくても、他の詐欺で狙われる可能性が高くなるらしい。絶対ダメ、個人情報ポロリ！

　ただ、私たち子どもが「気を付けなよ」と必死で注意しても、肝心の親がほとんど聞いてくれないという虚しさよ……。なぜなら、親にとって子どもは、頭の中ではいつまで経っても「チビッ子」。「子どもが言うことなんて自分はとっくに分かっている」というアタマがあるので、軽く聴き流してしまうのだ。これが本当に困る。

今年の5月、兵庫県でこんな事件があった。あるＡＴＭコーナーで、シニア女性が、携帯電話で通話しながら機器を操作していたという。彼女は、市職員を名乗る電話の相手から「還付金があるので、振り込みをして」と誘導されていたのだ。完全に振り込め詐欺やん！　

しかもショックなのが、このときちゃんと娘さんが付き添っていて「還付金詐欺だから、やめて！」と必死で制止していたのである。娘の言うことに全く耳を貸さないオカンの頑固さよ……。

結局、金融機関の職員と、たまたま隣のＡＴＭで操作していた女性の声かけによってオカンは思いとどまり、被害を免れた。しかし、娘さんの気持ちを思うとたまらない。立場全く無いやん！　

　このように、親にとって娘・息子は一番大切な存在ではあるだろうが、同時に一番信用していない存在でもあるのだろう。うちのオカンも私の話は「はいはい」と右から左へ聞き流すが、オバハン仲間の言うことなら聞く。

　シニアの方々、頼むから子どものアドバイスや注意をバカにせず、耳を貸してほしい。そして、振り込め詐欺にご注意ください。お金は大事だよ！

【法善寺灯子さんのプロフィール】

関西在住ライター。性別：女性。好物は串カツとお好み焼きのブタ玉。兵庫、大阪、京都、奈良、三重、滋賀などフットワーク軽く駆け回り、愛すべき関西の面白ネタを探す。