【山之上彼方プロフィール】

陰謀説・オカルトライター。木曜スペシャルやUFO、1999年終末予言などに心震わせ青春を過ごしたオカルト世代。あの世とこの世は本当に地続きかもしれないと思っている。ましてや宇宙人がいないわけがないと断言する情熱家でもある。

【聖地の妖怪話】

全国的に一気に気温が上がってきている今日この頃。しかも、マスクで口を覆い隠さねばならない辛さ。再びコロナ禍の猛暑がやってきました。せめて心は涼しくいたいものです。

ということで今回は、ヒンヤリとするちょっと不思議な話を。

日本二大聖地の一つとして有名な「熊野」。ここは、神話の時代から黄泉の国につながる地として伝えられています。さらには、熊野がある和歌山県土の約８割を、森林が占めることから、豊かな自然にからんだ様々な妖怪伝説が語り継がれているのです。

特に有名なのは、熊野の山中に住み、旅人に取り憑く「ダル」。野球のダルビッシュ選手とはなんの関係もありません。妖怪です。奥山で遭難して亡くなった人の霊魂がさまよったものといわれています。

このダルに取り憑かれると、特に空腹でもないのに、急に激しい飢餓感に襲われ、一歩も足が進まなくなるという恐ろしさ。そこで熊野の里では昔から「山に入るときには、必ずダルの口に入れるための握り飯を持っていくこと」「ダルが現れたら手に『米』という字を書いてなめる」という教えが伝わっているそうです。

そして、この「ダル」に実際取り憑かれたとされるのが、日本を代表する奇才中の奇才も、植物学者の南方熊楠。小さい頃、熊野の山越えをする際、ダルに取り憑かれ、仰向けに倒れ危機一髪！　幸いにも背に負った大きな植物採集バッグが枕の代わりになり、岩で頭を砕かずに済んだと「南方熊楠全集」に書かれています。

このエピソード、「はいはい、お腹が空き過ぎて具合が悪くなっただけでしょう」と一笑に付す人もいるかもしれません。しかし、熊野の雄大な自然は、本当に妖怪の一人や二人いてもおかしくない雰囲気。逆に「妖怪がいない方が不自然」という空気なのです。

緊急事態が落ち着いたら、ぜひ熊野に行って魂の選択をしたい。ダルとの遭遇は避けたいところですが、大いなる自然の中で、人智では計り切れない不思議なパワーを浴びたいものです。

熊野本宮大社の境内にはカフェがあり、神の使い「八咫烏」をモチーフにしたＴシャツなどが販売されているそうです。

こういうパワースポットのオシャレ系アイテムは、売っている場所の神聖さと商売魂とのギャップがすごいのですが、それも魅力。ついウキウキと買ってしまうクセがあります。私の心に、「ミヤゲホシー」という妖怪が取り憑いているのかもしれません。