夕やけ大衆の読者の皆さん、スケベ漫画家・成田アキラでございます。

　今回はワシが出会った素晴らしきスケベ仲間の話をしようか。

　その人物は……仮にHさんとしておこう。Hさんの年齢は戦前生まれの80代。私と30年来の付き合いがあるとても元気なご老人だ。彼と知り合ったのは、とある会員制の乱交パーティー。

　この乱交パーティーは、高級ホテルの最上階に3部屋あるスイートルームを借り切って月に1回ほど行われていた。3つの部屋は、それぞれ出会いの部屋、セックスをする部屋、寝る部屋に分かれていて、スケベな男女が、好きに会話したり、盛り上がれば好きにエッチもできるというシステム。参加資格は会員の紹介が必要かつ身元も確かでないとダメなので、参加者は節度を守って遊べるスジの良い変態ばかり(自分の好きなプレイばかりして場を乱したり、こういう場のことをほかでペラペラとしゃべってしまう変態も多いのだ)。なので安心して遊べるのが大きな特徴だった。

　ワシは毎月のように、その乱交パーティーに参加していた。そこでHさんとは、何度も顔をあわせるうちに次第に会話するようになった。上品で落ちついた雰囲気のHさんは、身につけているものが、素人目にみても高級品ばかり。会話の端々から溢れる知性と相まって、只者ではないことはすぐに分かったが、仲良くなってから、素性を聞いたときにはさすがのワシも驚いた。

　なんと彼は、会社名をいえば誰もが知っている大企業の会長であり、日本経済の核心にいるような人物だったのだ。

　Hさんは、地位もお金もあるだけに、その気になれば有名人でも好きに抱くことも可能だった。聞けば、実際あらゆる美人を抱いて性を愉しんできていた。

　そんなHさんが、なぜこの乱交パーティーに出入りしていたかというと、普通のセックスではもはや満足できなくなっていたからなのだ。自分の性癖を受け止めてくれる仲間を求めて、ここへやって来たのだ。

　ワシは、Hさんの話を聞いて、その性癖を叶えるお手伝いをすることにした。幸いなことにワシがパーティーに同伴していた、性に貪欲な人妻を気に入ったようなので、彼女の夫を交えて、プレイすることにしたのだ。

　そんなわけで、乱交パーティーとはまた別のある日、ワシとHさん、そして人妻とその夫がホテルの一室に集まった。

　まずHさんは、人妻とその夫を自分の目の前でセックスさせた。そして、夫婦がマグわい部屋の中がジュポジュポと卑猥な音で満たされたそのときーー男性器と女性器の結合部におもむろに顔を近づけ、そこから流れ出る汁を懸命に舐め始めたのだ。

　実は日本経済界の大立者であり、有数の大金持ちの彼の性癖はとんでもないマゾヒストであり、彼によれば、ただひたすら奴隷のように扱われながら、奉仕するのが夢だったというのだ。

　その後も、仰向けになって喜色満面で人妻にオシッコをかけられたり、夫婦が風呂に入るときも召使いの如く体を隅々まで洗ったりと変態っぷりをワシに見せつけてくれた。

　確かに、地位も財産もある人物のこんな姿は、いくらベッドの上とはいえども人には見せられなかっただろう。

　ワシはHさんとの付き合いの中で学んだことがある。それは誰しも自分の中にある性癖には抗えないということだ。

　エラい官僚やセンセイが痴漢や覗きみたいな犯罪を犯して、ニュースになりすべてを失ってしまうことがある。端からみたら「なぜそんなことを……」と思うようなことでも、それをしているときに、当事者は脳内で世界一の快感を感じているのだ。それはなにも性的なことだけではなく、万引きやギャンブル、薬物に、ダメと分かっていてもハマってしまうのも同じだ。

　この日、Hさんはプレイが終わったら、さっきの快感で蕩けそうな顔から、物静かな紳士の顔に戻り、さっそうと帰って行った。

　あれからもう30年くらい経った。Hさんは、ワシの大切なスケベ仲間となり、相変わらず元気だ。そして、もちろん性癖も変態マゾヒストのままだ。

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