夕やけ大衆の読者の皆さん。スケベ漫画家・成田アキラでございます。

　夕やけ大衆の編集長によれば、このサイトは中高年専用なんだそうだね。その世代といえば70年代、80年代には仕事に女にと元気真っ盛りだったはず。そんな諸兄たちは、きっとワシの名前をどこかで聞いたことがあるだろう。

　そうワシは、テレクラ(テレフォンクラブ）で出会った女性との艶事を漫画に描いて一躍有名になった〝あの〟成田アキラなのだ。

　そんなワシもいまや古稀を5年も超えた75歳。でも、まだアッチもコッチも現役で毎日を楽しんでいるのだ。この連載ではそんなワシの日常や考えたことを皆さんにお知らせできればと思う。

　さて、まず第一回目の今回はワシが最近ハマっていることについて書こう。

　この年になっても、毎日楽しいことがたくさんあるし、興味のあることも常にいくつかあるんだけど、今一番興味を持って調べたりしているのが「江戸時代」のことだ。

　ワシはスケベな漫画を描いているのをナリワイにしているのは先に書いた通りだが、実は江戸時代にも同じようなことをしていた人がいるんだよ。

　葛飾北斎や東洲斎写楽で知られる浮世絵は世界的な芸術として知られているのはきっと皆さんもご存じだろう。そんな浮世絵の中にも春画というジャンルがある。春画というのは、江戸時代の性を描いた浮世絵で、現在でいうところのエログラビアやエロ漫画のようなものだ。まさに、それはワシが描いている漫画と同じなわけだ。

　春画を描いている浮世絵師の中でも、もっともワシが心惹かれたのは英泉という作家だ。この人は江戸時代に一番売れた浮世絵師とも言われているんだけど、春画でも超一流の人物なんだ。まず春画を描くときの画号（ペンネームみたいなもの）が素晴らしい。そもそも「英泉」という名前自体もエロい意味が隠されている。まず「英」という字は、優れているという意味があるわけだ。〝英〟才教育とか〝英〟明というでしょ。そして「泉」は漢字を上下に分けると「白」と「水」に分けられる。「白い水」といえばピンと来る方も多いだろう。

　そう！　ザーメン、いわゆる精子のことなんだ。だからこの「英泉」という「優れたザーメン」って意味になるんだ。英泉は他にも「淫乱斎英泉」や「淫斎白水」、「雁高」だのなんだのと変な画号を使っている。

　英泉は画を描くだけでなく文章も自分で書いていたりするんだけど、まさにこれってワシの仕事と同じなんだよね。

　「こんな人がいたんだ！」って驚いて、高い浮世絵の研究書とかを買い込んで、さらにこの英泉って人のことを調べてみると……やっぱり、ワシにソックリなんだ。

　なんと彼は、体験浮世絵師として、自分で女を抱いたり遊郭で遊んだりしてその体験を元に春画を描いていたみたいなんだ。

　実は有名な浮世絵師も数多く春画を描いている。例えば北斎もそうなんだけど、彼の春画は苦手でどうも線に色気がない。実際に北斎は春画の仕事自体をあまり好んでいなかったようなんだ。そこへいくと英泉は、完全に女好きのスケベ。ワシと同じでね(笑)。それだけに「好きこそ物の上手なれ」じゃないけど線が実に色気たっぷりで実にいいんだ。

　これはワシも女性の肉体をたくさん描いてきたから分かる部分でもあるんだけど。

　描いている内容も覗きや野外プレイや3Ｐと、とにかくマニアックなのも多い。これもまたテレクラで知り合った女性とのマニアックなプレイを描いてきたワシと同じだ。

　いつの時代も同じようなことを考えて、同じようなことをする人がいるもんだなあとワシは感動したね。そして100年後、200年後の日本にも、ワシの漫画を読んで同じことを感じるような男がいてほしいものだ。

　英泉やワシのように、スケベなことをしながら、画や文章を描き楽しく生きていられるような人間がいられることこそが、日本という国の素晴らしさのひとつなのだから。

成田アキラ先生プロフィール

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