演技を超えた菅野の悶え泣き

　このように、あえぎ声に注目すると、昭和と平成、令和で傾向があることが分かる。

「１９８０年代の女優は、あえぎ方がＭっぽいんです。たとえば、８４年公開の映画『天国の駅 HEAVENSTATION』では、吉永小百合（76）が温泉宿で津川雅彦に犯されるんですが・・・・・・」（映画雑誌編集者）

　白襦袢姿の吉永は寝込みを襲われ、ふすまの前でＭ字開脚させられてしまう。

　すかさず津川が彼女の股座に手を差し込み、「いいだろ？」と手マンを開始。　

「いや、やああ・・・・・・」　泣きべそをかく吉永だが、次第にすすり泣きに変わる。　

「んっ・・・・・・くぅッ。ハアハア、あうぅ」

　眉根をひそめ、唇も結んでいるが、鼻から漏れる吐息が甘い。やがて四つんばいで後ろから突かれると、「いやあ・・・・・・ううぅ、アア、あん、ウッ・・・・・・アアアっ」

　と、口では嫌と言いながらも感じていたのだ。

　松坂慶子（69）も、声をあまり漏らさない。８１年公開の映画『青春の門』では、菅原文太の女房役で、巨乳を揉みしだかれ、「はう、んぐう・・・・・・ハぁ、あうう・・・・・・ひいぃ」

　高まってくる女の悦びを懸命にこらえようと、必死に声を押し殺していた。　

「奔放なイメージのある石田えり（60）は８１年公開の映画『遠雷』で、ビニールハウスの中で対面座位セックス。見事なグラマラスボディを披露しましたが、あえぎ声はハアハアの吐息中心で、ヤラれている感があった」（映画ライター）

　高杉氏が、こう語る。　

「現代よりも女性の処女性が重要視されていたので、恥じらいのあるあえぎ方が主流だったのでは？」

　それを証明するのが、数多くの濡れ場に挑んできた黒木瞳（60）。９７年公開の映画『失楽園』では、官能的な艶っぽいよがり声を連発していたが、初めて脱いだ８６年公開の映画『化身』のときは、控えめで可憐だ。

　藤竜也とのカラミで、「私が欲しいんですか・・・・・・優しくしてください」

　震える声でこう囁く黒木。野イチゴのような乳首を吸われても、唇を結んで無言。

　正常位で一突きされると、細い首をのけ反らせて、うめくのみ。その後、ゆっくりピストンされても、「ハア、ハア・・・・・・アァ」

　たまに、ため息のようなあえぎ声を漏らす程度だ。

「素晴らしいエロス。奥手な女性が、ほんのわずかでもあえぎ声を高めると、男はゾクッときますね」（前出の吉村氏）

　そんなプロの目から見ても素晴らしいと感じるのは、菅野美穂（44）の声だという。菅野といえば、映画『さくらん』（２００７年）の花魁役が有名だ。　

「客に騎乗位でまたがるシーン。菅野さんは“あはんっ”と強く吐息を漏らしたり、“んふぅ”と気持ちよさげに悶えたり、あえぎ方がすごく自然。演技臭さゼロのあえぎ声こそ、最高にエロい」（前同）

　同じ意味で川上麻衣子（55）もすごい。速水典子と競演した映画『天使のはらわた　赤い閃光』（１９９４年）は、エロい台詞がめじろ押しなのに、実に自然体なのだ。川上は速水を四つんばいにさせると、「触っていい？」

　糸引くような、ねっとりとした言い方で囁く。

　続けて、秘部を重ね合う“貝合わせ”になると、「アアっ！あん、イイッ。ハアぁー、いいっ！」

　川上は鼻にかかった色っぽい声を放ち、何度も「いいっ！」と連呼。　

「川上は北欧育ちで、オープンな性格。性に関しても開放的なところがあるんでしょうね」（芸能ライター）

　では、「感じる」セックスの声でナンバーワンに輝いたのは誰か。　

「高岡早紀さん（48）ですね。映画『female～夜の舌先～』（２００５年）の濡れ場は圧巻。あえぎ声でもド肝を抜かれました」（吉村氏）

　町工場に勤める地味なＯＬ役の高岡は夜な夜な、淫夢を見てしまう。職場の男にバックで犯される夢で、「ああ、こんな後ろからなんて・・・・・・」

　と囁いて、淫らに腰を振る。目が覚めると、「おねしょだよ、これじゃあ・・・・・・」

　とパンツの中に手を差し込み、恥じらうしぐさも色っぽい。極めつきは、立ちバックで巨乳をブルンブルン揺らして悶えるシーンだ。　

「ああああ～っ、アン、ああん、いろんなところがこすれて、気持ちイイ～！」

　あえぎ声交じりに、淫らな言葉を本能のままに言い放って、昇りつめる！

「高岡早紀だからこそ、大悶絶のあえぎ声もハマる。男の股間を刺激するエロボイスで、映画史上に残る名作ですね」（高杉氏）