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長月タケオ選「中高年の性告白」第40回 神奈川県在住Y・Sさん(63歳)の告白【性奴隷になった令夫人】

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長月タケオ選「中高年の性告白」第40回 神奈川県在住Y・Sさん(63歳)の告白【性奴隷になった令夫人】

このコーナーは官能小説家の長月タケオ氏が一般の中高年読者から寄せられた「性の告白」をご紹介するものです。そこにはシニアである我々同世代が共鳴する「あの頃」の時代背景があり、実体験ならではの生々しい「性の現実」があります。懐かしくも妖艶な古き良き官能の世界をご賞味頂ければ幸いです。編集長

 

【性奴隷になった令夫人】

 

Y・S 63歳 神奈川県在住

 

定年になるまで銀行に勤めていた。出世に縁がなくて重役にまでたどりつくことはできなかったが、家族にも恵まれ、まあまあいい人生が送れたと思っている。仕事はそんな調子だったが、それ以外に、わたしは稀有な経験をしている。それはこの歳になった今も続き、定年後の空いた時間を有効に使っている。いまから、その経緯を記そうと思う。

 

それは50代半ばのころ。外交員として外回りをしていたわたしは、時間稼ぎに入った書店で一人の女性を見つけた。

 

「あれは……」

 

サングラスをかけ、目深に帽子をかぶっていたが、それは間違いなく、得意先の奥さんだった。

 

顧客であるだんなは、運送会社の社長。不況の折でも業績はよく、そのうえ先代から受け継いだ資産もあり、当行にとっては上得意のひとつだった。そして妻である奥さんは、気品の漂う麗人。そのときも、きらびやかなワンピースを身につけたたずんでいた。その姿は、周囲の空気すら彩るようなあでやかさに満ちていた。

 

「ごぶさたしております」

 

わたしは声をかけた。その拍子に、驚いた奥さんは手にしていた雑誌を床に落とす。

 

わたしはかがんで拾いあげる。そして、その中身を見て驚きを覚えた。

 

文芸雑誌のコーナーにおかれてはいたものの、内容はSMを主体とした小説誌。しかも写真が多く掲載されている代物だった。

 

バツの悪さを感じたのか、奥さんは黙ってその場から立ち去ろうとした。

 

「待ってくださいよ」

 

わたしは呼び止めた。

 

「買わないんですか?」

 

その言葉に、奥さんはサングラス越しにわたしを見る。

 

「じゃあ、わたしが買いますよ」

 

「え?」

 

「実は、わたしもSMには興味があるんですよ」

 

そのとき、隠されたひとみの眼光が、キラリと光ったような気がした。

 

「奥さん、よろしければ語り合いませんか」

 

「語り合う?」

 

「そう、同じ趣味を持ったもの同士」

 

思い切り拒否されるか、もしくは無視されるかと思ったものの、意外にも彼女は素直にうなずいてくれた。そこでわたしは、せっかくだからとその雑誌を購入し、そして近くの喫茶店に場を移したのであった。

 

店の中でも、奥さんはサングラスと帽子をつけたままだった。それはわたしにとっても好都合なので、気にせずホットコーヒーを、彼女は紅茶を注文した。

 

「しかし驚きです。奥さんのような人が、あの手の本に興味があるだなんて」

 

「わたしはダメなの?」

 

「いや、そういうわけじゃないんですが」

 

「じゃあ、どういう意味?」

 

高飛車な態度。ひょっとして、彼女はSなのかもしれないと考える。それならちょっと厄介だ。わたしに、いじめられてよろこぶ趣味はない。

 

「端的にお聞きします。奥さんはSなんですかMなんですか?」

 

「それを聞いてどうするの?」

 

「わたしはSなんです。女性の柔肌に食い込む荒縄の様子だとか、苦悶にゆがむ表情に興奮するんです」

 

「どうして?」

 

「どうしてなんでしょう。たぶん、人がモノに変化する様子が好きなのかもしれません」

 

「モノは表情を変えないわよ」

 

「それは、そうですね」

 

「Sっ気のある人は、過去にしいたげられていた記憶があって、それを解消しているのかもしれない。もしくは自己顕示欲が強いとか」

 

「自己顕示欲?」

 

「そう、もっと自分を知って、もっと自分を見てっていう欲求」

 

「それは逆じゃないんですか?」

 

「いいえ、その欲求が溜まると、強制的に自分を認めさせようとするんだわ。だから暴力で興奮する」

 

「SMの暴力と一般的に言われている暴力は違いますよ」

 

「どこが? なにが?」

 

「そうですね」

 

わたしは、少し間をおいて言う。

 

「愛です」

 

その瞬間、奥さんは吹きだした。そして口もとを押さえ、ケラケラ笑う。

 

たしは真剣に語ったつもりだった。しかし、これで彼女の警戒心が解けるのなら、それはそれでいい。

 

「その、愛っていう根拠はなに?」

 

「そうですね。まずひとつは、女性を恨みもしないし、傷つけようとも思わない。確かにムチで肌を赤く染めたり、ロープであざをつけたりはありますけど、血は流させない」

 

「それはおかしい」

 

「どうしてですか?」

 

「究極のMは殺されることよ。傷つき、のたうちながら快楽を感じるの」

 

「では、奥さんも?」

 

「わたしは、そこまでハードじゃない」

 

彼女はそういって、カップを口に運ぶ。

 

「わたしはなにもかもを忘れたいの。感情だけに溺れる物体になりたいの。その点では、あなたのいうモノに近いかもしれない」

 

「痛みのなかで理性を忘れる」

 

「そうね、痛みと屈辱でリフレッシュしたいのかも」

 

「リフレッシュとはまた、健康的な」

 

「ねえ、いまはお仕事の途中?」

 

「はい。しかし、時間に余裕はあります」

 

「それなら」

 

奥さんはサングラスをはずした。

 

「試してみない?」

 

「え!」

 

「アナタだったら信用できそうな気がする」

 

それから、わたしたちはラブホテルに向かった。とはいうものの、SMプレイをするんだから、それなりの道具がそろっているホテルでないと無理だ。それは買った雑誌で情報を得、広告の載っていたところへ赴いた。

 

高慢な態度をとってはいるが、奥さんは、SMはもちろん、その手のホテルに入るのも初めてらしい。

 

わたしもラブホテルの経験はあるが、SMプレイは初めてだ。緊張しながら部屋を選び、エレベーターに乗る。入ったところは黒い壁に赤い装飾が施され、おどろおどろしいムードに包まれていた。

 

「じゃあ、わたしはシャワーを」

 

そういって浴室ヘ行こうとした瞬間であった。彼女はわたしの腕をつかんで引き止めた。

 

「いかないで、一人にしないで」

 

その表情は、いままで見せたことのない、頼りなげではかないものだった。

 

「このままでいい、このままでいいから」

 

「でも、汗かいてますよ。それにきのうは帰りが遅くて、風呂にも入ってません」

 

「いいの」

 

彼女はひざまずくと、いきなりわたしのズボンをおろした。そして、いまだ力のこもらない一物に舌をはわせはじめる。

 

「お、奥さん」

 

「お願い、なにもかも忘れさせて。わたしをあなたのおもちゃにして」

 

いまにも泣き出しそうな声で彼女は哀願する。こうなれば、わたしも嫌いな方ではない。

 

わたしは、とりあえず彼女を縛りつけることにした。両手首に革製の手錠をはめ、足首もロープでひとつにする。帽子はもちろん、ワンピースも下着も脱いだ彼女は、長い髪を乱しながら身体を前に折る。わたしはほくそ笑み、彼女を足蹴にする。ダルマのように転がった彼女は、それでも抵抗をしめさない。

 

「じゃあ、さっきのつづきをしてくれ」

 

わたしは彼女の髪をつかんで身を起こさせ、十分そそり立った一物を顔面に当てた。

 

アンモニアと汗の臭いがする股間に、彼女は顔をうずめた。赤い口紅で彩られた唇に、わたしの一物が埋没する。

 

「そうだ、もっとだ」

 

口だけでわたしを愛撫する彼女。わたしはその髪の毛をつかみ、奥へ奥へと腰を振る。苦しそうにうめきながらも、彼女ははなそうとしない。わたしは彼女の頭を押さえつけ、乱暴に抜き差しを繰り返し、そのまま精を吐き出したのであった。

 

その後、ロープで全身を縛り、ベッドの上に放置した。意外とむっちりとした体躯にロープが食い込む姿は、淫靡でエロチックだ。最初の射精で余裕のあるわたしは、まんじりとロープの隙間から飛び出る乳房や、あからさまな陰部を見つめる。

 

「だめ、恥ずかしい。お願い、お願いします」

 

身がうずき、愛撫や挿入を望んでいても、何もされない屈辱に彼女は耐えかねたらしい。

 

「お願い! このままじゃあ、変になるぅ!」

 

「じゃあ、まずはこれだ」

 

わたしは巨大な大人の玩具を取り出した。そして脚のロープをはずし、両脚を大きくひろげると、濡れそぼった割れ目に挿入する。奥までめり込み、うごめく感触に、彼女は大きく身をのけ反らせて喘いだ。

 

「やあああん、だめぇ!」

 

その後、いろんな玩具で彼女をいたぶる。もちろん、両手の自由は奪ったまま。全身には縄が食い込んでいる。

 

彼女の身体は興奮と羞恥で赤く染まり、汗がにじみ出て髪の毛が顔に張りつく。

 

「お願い、もう、気が狂っちゃう」

 

「本物が欲しいか」

 

「欲しい、欲しいの」

 

「じゃあ」

 

わたしは彼女を縛ったまま前のめりにし、そのまま背後から貫き通したのであった。

 

その行為が気に入ったのか、それともくすぶっていた思いに火をつけてしまったのか、彼女はことあるごとに、わたしを誘ってきた。貴婦人を玩弄するよろこびをわたしも感じ取っていたので、断ることなどない。プレイはエスカレートし、ムチにロウソク、そして先を鈍くした千枚通しも用いるようになっていた。

 

「もう、わたし、逃げられない」

 

「オレもだ」

 

「これからもずっとね、わたしが死ぬまでずっと」

 

その言葉通り、いまも関係は続いている。しかし、これ以上になると、本当に彼女はよろこび、絶頂に達しながら、命を落としてしまうかもしれない。そのときわたしはどう対処すればいいのだろう。少し不安に思っている。

 


【選者紹介】

 

長月タケオ(ながつきたけお)

 

1962年生大阪府出身在住。1988年官能小説誌への投稿でデビュー。

 

1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作受賞。

 

おもな著作『ひとみ煌めきの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)

 

『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)

 

『禁断の熟女』(ベストロマン文庫・共著)

 

『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)

 

『誘惑する女 熟女たちの悦楽』(九月堂・電子版)

 

ほか

 

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