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中高年の性告白

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長月タケオ選「中高年の性告白」第54回 群馬県在住H・Yさん(67歳)の告白【シニアの山岳会で美熟女意気投合】

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長月タケオ選「中高年の性告白」第54回 群馬県在住H・Yさん(67歳)の告白【シニアの山岳会で美熟女意気投合】

このコーナーは官能小説家の長月タケオ氏が一般の中高年読者から寄せられた「性の告白」をご紹介するものです。そこにはシニアである我々同世代が共鳴する「あの頃」の時代背景があり、実体験ならではの生々しい「性の現実」があります。懐かしくも妖艶な古き良き官能の世界をご賞味頂ければ幸いです。編集長

【シニアの山岳会で美熟女意気投合】

H・Y 67歳 群馬県在住

定年も過ぎ、女房も亡くなると家に引きこもりがちになる。長男と同居しているので生活に不便はないが、足腰が弱くなり、気分も滅入ってくる。なんとかしなければ老いも加速すると考えていたとき、同じ町に住む大学時代の友人からシニアの山岳会に入らないかと誘いがあった。

わたしは高校、大学と山岳部に所属していて、経験も豊富。それに、わたしの心を揺り動かしたのは、友人から発せられた一言だ。

「シニアといえども、50代前後の人妻もいる。中には40代の人妻もいて、これがなかなか……」

友人はスケベで有名だった。女癖が悪くて離婚の経験もある。いまは再婚をはたし、それなりに落ち着いた生活を送っているようだが、三つ子の魂なんとやら。一度身についた癖はなかなか治らない。そしてわたしも、彼と負けず劣らずのスケベを自負していた。

とにかくわたしは、市が主催する山岳会に入った。何回か通っているうちに参加するメンバーとも仲がよくなり、とくにわたしの経歴を話すと、あれこれ相談を持ちかけられることもあった。

そんな中に、年のころなら40代後半、端正な顔立ちで気品もそなわった一人の女性と知り合った。

彼女は未亡人で、自然が好きだからこの会に入ったという。わたしはあこがれをいだき、なんとか親しくなりたいと考えたが、ライバルが多くて親密になれない。二人きりで会話を交わしていても、常にだれかが邪魔に入る。

とはいうものの、それ以外の面では楽しく日々が過ぎ、5月に向かったのは、さほど困難ではないが、そこそこ標高のある山だった。

季節は初夏。ここ数日は晴天が続いていたが、前日の確認では、どうも雲行きがあやしい。

「これはひょっとしたら、ひょっとするな」

わたしはいままでの経験から、万が一のための装備を整えた。おかげで重装備にはなったが、山を甘く見て命を落とすのは自分だ。

集合場所におもむいたとき、だれもがあまりにも軽装なので驚いた。友人までもがわたしを見て、冷やかしの声をかける。

「なんだ、山小屋で1泊でもするつもりか」

案内役は30代ソコソコの市の職員。一度、経験をたずねてみたが、ハイキング程度でしか山登りの経験はないらしい。

「予報では雲がかかっても雨は降らないといってましたし、こんなに青空がひろがっているから大丈夫でしょう」

彼はいう。しかし、それは平地の天気予報であって、当てにならない。

予定通り山に入り、正午少し前に峠で休憩。そのころになると、晴れ渡っていた空に雲がかかりはじめた。それでも計画は実行される。木々が立ち並び、うっそうと葉が茂る狭い山道を歩いていると、ポツポツと雨が降り出した。

「これはいけない。急ぎましょう。頂上に着けば山小屋が」

引き返すべきだ、とわたしは思った。山の中の気温は低く、雨に打たれれば体力も落ちる。それに雨具を用意しているのも少数だ。わたしは、そう進言しようとした。そのとき、メンバーの一人が悲痛な声を上げる。

「Mさんがいません!」

Mというのは、わたしがあこがれをいだいていた女性だ。なんでも用を足しにいくといったきり、姿が見えないという。

「携帯は?」

「つながりません」

「いったい、どこに」

場は騒然となる。担当職員の顔は青ざめる。雨は勢いを増し、やむ気配を見せない。

「みなさんはこのまま下山してください。わたしがなんとか」

わたしはそういって、彼女がいなくなったという場所へ向かう。

「だ、大丈夫ですか」

「少なくともアンタよりはね」

わたしは職員にそういい捨て、彼女をさがした。

案外簡単に、彼女の姿を見つけることはできた。本道から少し離れたわき道の、巨木の根もとにうずくまっていた。

「大丈夫ですか」

わたしは落ち着いて声をかける。

「ええ、けど、足をくじいたみたいで」

「それはいけない」

わたしは荷物の中から、痛み止めのスプレーと湿布薬を出す。

「歩けますか」

「なんとか」

彼女の肩をかかえ、もと来た道に戻ろうとする。しかし、わたしとしたことが迷ってしまい、奥へ奥へと進んでしまう。

雨はやんだが身体は濡れている。冷えた彼女はぶるぶると震えはじめる。このままでは大ごとになると判断したわたしは、歩きまわることをやめ、適当な場所を見つけてシートを敷き、彼女を座らせると火を起こす。そして温かい飲み物を入れて彼女に差し出した。

両手でコップをかかえ、すすりこんだ彼女の表情からは、おびえと不安が消えたようだった。

「用意がいいんですね」

「なれてますから」

「頼りになる男の人ってすてきです」

彼女はほほ笑みながら話す。

時間も早いし、まったく人が通らない場所でもない。日も差してきたことだし、体力さえ戻れば自力で下山が可能だと、わたしは彼女をはげます。

彼女は何度もうなずき、それでもなかなかその場を動こうとはしない。足が痛むのか、それとも歩くのが億劫なのか。

「まだ、動けませんか?」

「いいえ、もう平気です」

「じゃあ、おりましょう」

「ええ、けど、その前に」

彼女はいきなり、わたしに抱きついてきた。

「こうしていてください。わたし、久しぶりなんです。殿方にやさしくされるの」

「え、けど……」

「いままで、言葉たくみに言い寄ってくる人はいました。けど、真剣にわたしを守ろうとしてくれたのは……」

彼女はわたしを見あげ、目を閉じる。それが何を意味することなのかは、十分理解できる。わたしは周囲を確認して彼女の唇を受け入れる。すると彼女は、わたしに覆いかぶさってきた。

「寒いんです、心も身体も、だから、温めてください」

わたしの股間をさぐる彼女。わたしは久しぶりの感触に興奮をおぼえ、彼女に身をゆだねたのであった。

行為が終わると、彼女は人が変わったように元気になり、さっさと身支度を整えると登山道目指して歩きはじめた。わたしは久しぶりの射精で、逆に体力をなくしている。

「こっちで、よかったですよね」

「はい……」

太陽の位置で方角を確かめ、本道にいたる。そして無事、下山をはたし、わたしたちは事なきを得たのだ。

その後、彼女との付き合いは深まった。互いに独身なので、誰はばかることもない。

ただあのとき、いくら足をくじいていたとはいえ、登山道に戻れない状態だったのか疑問に残る。なぜなら、コトを終えた彼女は、さっそうともとの道に帰ることができたからだ。

そのことを確かめても、答えははぐらかされる。けれど、これから先の楽しみが増えたということで、わたしは詮索しないようにしている。

  • 【選者紹介】
  • 長月タケオ(ながつきたけお)
  • 1962年生大阪府出身在住。1988年官能小説誌への投稿でデビュー。
  • 1995年第1回ロリータ小説大賞(綜合図書主催)佳作受賞。
  • おもな著作『ひとみ煌めきの快感~美少女夢奇譚』(蒼竜社)
  • 『病みたる性本能』(グリーンドア文庫)
  • 『禁断の熟女』(ベストロマン文庫・共著)
  • 『19歳に戻れない』(扶桑社・電子版)
  • 『誘惑する女 熟女たちの悦楽』(九月堂・電子版)ほか
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誘惑する女 熟女たちの悦楽 長月タケオ短編集
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