「嘘つき、ハッタリは確実にイジメられるね。俺は〇〇組の誰々と仲が良いだの、俺は半グレの◯◯連合とか言う奴が必ずいる。でも、ムショには本当にそういう人間と関係のある人間もいるし、そんな嘘は、すぐに“メクれる”。結果、おちょくられたり、“シャリアゲされる”ことになる」　ちなみに「シャリアゲ」は刑務所の典型的なイジメで、つまりシャリ（＝メシ）を取り上げられること。ちなみに「メクれる」は嘘がバレることを意味する。

「本当に悪い奴は〝背中で語る〞が美学だろ？　俺のバックには誰々がいるなんてヤツは、それだけでアウト。他にも、俺はシャバに何千万円プールしているみたいなことをカマすタイプ。そういうヤツに限って、着ている服が支給された官品だったりする。本当に金があれば、領地金で自分のものを買えるはず。そういうハッタリをカマすヤツは、イジメられるね」（前同）

領地金とは、刑務所に入る際に、受刑者が持参する金のこと。刑期中に使える金は、この他に報奨金があり、これは刑務所内での労働で得られる対価のことだ。冒頭の木戸氏が解説する。「刑務所内の報奨金、一番上のランクが、計算工といって、みんなの給料を計算する係。この係が貰える給料の最高額が月に約１万円。反対に懲罰房内での内職仕事や工場の一番下の役職は、安いと月に４００円から８００円程度しか稼げない」

つまり、領地金を持たずに報奨金しかなければ、刑務所内でほとんど何もできないことを意味する。結局、シャバで貧乏なら、刑務所内でも同じく貧乏なのだ。それを隠そうと見栄を張れば、イジメられてしまう。「たとえば、冬の必需品のババシャツを１枚買うのに、約６０００円はかかる。報奨金の稼ぎだけでは、到底買えない。シャバに金があると言っているくせに、官品を着ているのは、そいつが嘘をついているってことだろ」（前同）

嘘をつく人間が嫌われるのは一般社会と同じだ。その他、犯した犯罪によっても、“差別”が行われるという。前出の小林氏が解説する。「ピンクと万引き常習犯の若いヤツらは、基本イジメられるね」　ピンクとは、字面からも察せられるが強姦犯のこと。刑務所だからといって、イジメを推奨して良い理由はないが、こんな話を聞くと、自業自得と思ってしまうのは、記者だけか。

また、若い万引き犯は、なぜイジメられるのか。犯罪としては、強姦に比べ、軽微な気がするが……。そして、なぜ小林氏は、「若い」と限定するのか。「一般的にアウトローには、泥棒はダサい犯罪という認識がある。けど、手に職もないおっさんで、シャバに戻ればホームレス寸前。むしろ刑務所にしか居場所がない“懲役太郎”みたいなタイプは、同情されるね」　懲役太郎とは、刑務所を出たり入ったりが、ほとんど習慣になっている手合いのことだ。

では、シャバに居場所のない中高年に限れば、刑務所にいても衣食住に困らず、イジメられることもなく、かえって幸せという理屈は成り立つのか。これを否定するのは、２０代を佐世保刑務所で過ごした、九州の某組織構成員、宮藤敦夫氏（３０）だ。佐世保刑務所の分類は「Ｂ級」。ここで初めて、「Ｂ級」が出てきたが、これは団組員、及び再犯者、累犯者を指す。つまり懲役太郎の類は、ここに入所することになる。「基本若いヤツのところに、おっさんが混ざっていると、行進ひとつとっても足並みが揃わなかったりで、イラつくんですよ。それで、つい、おっさんをイジメたりしちゃいますね。“遅いんじゃ、ボケ！”みたいな（笑）」