女はオナニーなどほとんどしない――と固く信じている本誌オヤジ記者だが、若手編集者のＭは、「何言ってんすか。いまどきは男より若い女のほうが全然進んでますよ！」と言う。
にわかには信じがたい話だ。

首を傾げ続ける記者が連れていかれたのは、東京・秋葉原にあるセックスデパート「エムズ」だった。

"大人のおもちゃ屋"のイメージといえば、「繁華街の裏通りにあるいかがわしい店」だが、表通りに面したエムズはまったく雰囲気が違うことにビックリする。

まるでアイドルグッズ店のように明るく、２０代半ばのＯＬふう美女３人が、「ちょっと寄っていこう」と恥ずかしげもなく入るかと思えば、２０代前半のカップルが手を繋いで楽しそうに入っていった。３階のバイブ＆ローターコーナーを覗くと、２０代の女性が連れの女友達に、「これ、プニプニしてて、なんか可愛くない？」と、ローターを愛おしそにいじりながら話す。
（アナタ……それはローターだよ。本当に使うの？）

思わず口を挟みそうになった記者だが、エムズの広報担当者は、最近の女性客の増加について次のように説明してくれた。

「女性誌などでオナニーやラブグッズの特集が多くなったこともあり、女性たちのハードルがどんどん下がっています。カップルや女性グループの来店もずいぶん多くなりました」

ここ数年、『ａｎ・ａｎ』や『婦人公論』などの女性誌が、「オナニーの美容・健康効果」や「セックスで、より快感を得るオナニー」といった特集を組み、反響も大きいのが理由のようだ。

作家の菊池美佳子さんが苦笑気味に話す。

「最近の女性誌では、オナニーではなく"セルフ・プレジャー"という新しい呼び方に代えて特集している。しかも、タブーだった"恥ずかしいオナニー"も、健康や美容のためと思えば、"しなくちゃ"となりますから（笑）。"自慰行為＝モテない女"という既成概念は完全に変わりましたね」

こうしてオナニーは一般的なものになり、女性も堂々と（?）大人のおもちゃ屋に出入りするようになったというわけか……。

もう一つ、アダルトグッズが「男が使うもの」から「女のため」になったことも大きいようだ。

「今年３月に女性向けブランド『iroha（イロハ）』が発売され、"女性が開発した女性のためのセルフケアグッズ"として話題になりました。いまや、羽田空港や成田空港のドラッグストアで売られるなど、外国人観光客にも人気です」（夕刊紙記者）

販売するのは、男性用オナニーグッズで知られる（株）ＴＥＮＧＡで、広報宣伝部担当者は人気の理由を語る。

「irohaの開発にあたっては、約２０００人の女性にリサーチを行い、女性４人のチームを中心に企画しました。irohaは女性目線で作られた商品なのです」

事前調査では、なんと約７割の女性がマスターベーションをしていると回答していたが、グッズを使うことに「興味はあるが、あと一歩手を伸ばせない」という女性も少なくなかった。

そのため、形や色が可愛く、柔らかな質感で、丸洗いもできる衛生的なローターが商品化された。

「発売２週間で、予測した３倍以上の注文が殺到し、一時は生産が追いつかなかったほど。２０代前半～３０代のユーザーのほか、５０代、６０代からも幅広く受け入れていただきました」（前同）

実際に愛用している２０代のデザイナー・Ｒさんが感想を語ってくれた。

「部屋に置いていても卑猥に見えないし、色も好み。音も静かだから隣の部屋を気にしなくいいんです。私は深夜に帰って欲求不満なとき、５～１０分くらい、ちょっと気持ちよくなって寝るのがお気に入りかな」

かつて、アダルトグッズといえば「男のスケベ心を満たす」商品だったが、最近のヒット商品を見ると、まったく違うようだ。

女性はオナニーをするとき、風呂場でシャワーなどを使ってやることが多いというのは、記者もよく聞いたことがある。
エムズには、バスルームで使えるオナニーグッズが多数揃っているのも納得のいくところ。

水の中で使える防水ローターやバイブはむろん、浴槽に入れる入浴用ローション、美容効果を高めるヒアルロン酸やコラーゲン入りのローションまである。

「バイブやローターの素材はシリコンが主流になっていて、ひと昔前より格段に進化しています。最近は、電池式よりも経済的な充電式のものや、欧米の有名ブランドものがよく売れています。これも女性ならではの売れ筋商品でしょうね」（前出・エムズ広報担当）

11月26日公開のVol.2につづく・・・。