「失礼しま～す」

　日本最大のＡＶメーカー『ソフト・オン・デマンド』の応接室に涼やかな笑顔で入ってきた彼女に思わず「お？」と驚きの声を漏らしてしまった。

　ちなみに、事前に渡された彼女のプロフィールは、

《佐田茉莉子（さだまりこ）　41歳　T162-　B85　W58　H88　福岡市でメンズエステ店を経営するかたわらセックスカウンセラーもしている。夫と離婚後は10歳の娘を育てるシングルマザー。この秋、自ら志願してＡＶデビューした美熟女》

　この手のＡＶ女優を何人も取材しているオヤジ記者は内心、（メンズエステって言ってもなあ、いわゆる風俗だろ。セックスカウンセラーも“男性専門の実戦的カウンセリング”てやつだろうし。ま、地方都市の風俗ずれしたウバ桜が、コロナ渦で客が激減してＡＶ出演を決意したってところか）なんて思っていたのだが、雰囲気がちょっと違うのである。

　胸の谷間が垣間見える淡いパープルのドレスこそ熟女ＡＶ女優らしいが、細面の表情や立ち振る舞いにそこはかとない上品さがただよい、崩れた感じがない。背もすらりと高く、とても41歳とは思えないボディラインをキープしている。藤色の和服で「今日はお茶会でしたのよ」なんてほうがずっと似合いそうな「名家の美しい奥さま」風なのである。

　少々声もうわずり「えーとぉ。福岡では、なんかメンズエステ店を経営されているそうですね」と聞くと、こちらの気持ちを見透かしたように妖艶な笑みを浮かべ、

「うふふ。福岡市のお店は、残念ながら（笑）、下半身関係のマッサージなんてのはまったくないごくごくマジメな男性美容系のエステなんですのよ」

　セックスカウンセリングも同様で「男性は基本的にＮＧ、女性同伴でご来店された男性にかぎりＯＫ」なのだとか。

　メンズエステ店の経営もかなりうまくいっているそうなのだが、こんな女性がなぜ、自らＡＶ出演を志願したのか？

「ＡＶ出演を決意したのは本当に自分でも突然思い立ったというか――いわゆる“神が降りた”って感じだったんです（笑）」

　ここをもっと詳しく聞きたいところだが、その前に彼女の性遍歴を簡単にご説明いただいた。

「わたし、子供の頃からかなりオシャマだったんですね。小さい頃から髪型やメイクに興味があり、小学校の頃には“わたし、ボディコンを着てみたい”と母におねだりして、わざわざ小学生用のボディコン服を作ってもらったぐらいでした。ええ、靴もハイヒールです（笑）。今から考えると、両親は“自分の人生をしっかり楽しみなさい”とよく言っていましたし、性にもかなりオープンでした。……うふふ、実はわたしね、小学生のころ、よく両親の寝室に忍び込んでいたんですよ。目的は寝室の屑箱で、両親が使ったコンドームの“調査”でした。コンドームを見つけると、“あ、お父さんとお母さんはちゃんとエッチしてる。良かったァ”って感じで、両親がセックスしていることを喜んでいたんです（笑）」

　初体験は18歳のころ。相手は高校の同級生だった。

「セックスはもちろん嫌じゃなかったのですけど、相手も初めてだったからおっぱいを強く触りすぎたりするんですね。気持ちいいってよりちょっと痛かったというのが本音です」

　20歳を過ぎて美容関係の仕事に進み、20人ぐらいの男性と交わった。

「20人て、多いのかしら？　でも、わたし、自分から積極的に求めるタイプじゃないんですね。すべて好きになった男性に求められたから、というパターンでした」

　セックスを求められても変に引くところはなかったが、実際のセックスになると、受け身で男性任せだったという。

「自分の快感を求めるってより、男性に“良かったよ”といわれるほうが嬉しい。どうすれば男性が気持ちよくなれるか、より興奮してくれるか。セックスのときはそんなことを考えてましたね。この頃はクリトリスの快感はありましたが、まだ中入れの快感は知りませんでした」