ところが、商社マンのご主人（３８）が、さっそく浮気をしてしまったという。
「相手は会社の女の子。もう腹が立って。離婚しようと思ったぐらいでした」

こんな彼女の前に現われたのが、宅配マンのＫさんだった。年齢は３０代後半。
それほど愛想がいいわけではなかったが、彼女の家の飼い猫がじゃれると、目を細めて優しい顔になった。

「配達に来ると、猫の話で盛り上がることも多かったんだけど、あるとき、彼の視線が困ったように泳いでいたんです。その視線を追うと、私の胸のあたりなの。胸のボタンが外れていたんですよね（笑）」

彼と関係を持ったのは、次の配達日だった。
「認め印を出そうと台所に行くと、でっかいゴキブリがいたんです。ギャーッと叫んで、その場にすくんでいると、彼が勝手口から"大丈夫ですか？"と顔を出してくれたの」
彼女が「そこっ！ゴキブリ！」と指さすと
Ｋさんはテーブルの新聞紙を丸めて、指さしたところに忍び足で近づいた。
彼の広い背中に隠れるように「そこ、スリッパの下」というと、突然ゴキブリが飛び出してきた。
再度ギャーッと叫んだ瞬間、バシッと新聞紙で叩く音が。
朋香さんは思わず彼の背中にヒシとしがみついていた。