酒飲みが口にしがちな“せっかくだし”は魔法のフレーズ

　デパートで化粧品販売をしている夏樹さん（４１）は、路上ナンパをしてきた男と飲み、そのままホテルに行ったことがあるという。「その夜は女子３人で飲んで、９時にお開きになったんだけど、少し飲み足りなかったんですよ」

　駅に近い交差点を渡ろうとしていたとき、「あの、失礼ですけど」と声を掛けられた。年齢は５０代半ば。今年流行りのアディダスのジャージを羽織った、ヒゲ面ながら身綺麗な男だった。「もし良かったら、一杯、つきあっていただけないかと思って。実は友達と飲んでいたんですが、ちょっと飲み足りなくて」と話し掛けてきたという。言葉も丁寧で、ニッコリ笑顔もイイ感じ。

「この年でナンパされたのが、ちょっとうれしくて、“１時間ぐらいなら”とＯＫしたんです」　交差点近くの居酒屋に入り、ビールで乾杯。インフラ関係の仕事をしているという男は、話題も豊富で、またたく間に約束の時間が到来。すると、彼が時計をチラッと見ながら、「せっかくだし……どうですか？　もし遅くなったら、近くまでタクシーで送りますから」と、彼女を見つめながら最終コーナーを迫った。

「彼の“せっかくだし”が効きましたね。何事においても、“せっかくだし”って押されると、断る理由がなくなってしまいます（笑）」　夫とずっとセックスレスだったこともあり、その夜、彼女は久しぶりに“男”を堪能したという。

「でも、これって彼の口癖なんですかね。“せっかくだし”って言って一緒にお風呂に入ったり、“せっかくだし”って言って２回戦を挑んで来たり、“せっかくだし”って言ってホテルでもさらに飲んだり……。とにかく楽しかったから、万事ＯＫですが（笑）」

　酒飲みが口にしがちな言葉のような気もするが、この“せっかくだし”は、自分も他人もドライブさせる魔法のフレーズ。酒のうまい季節。読者諸兄も、“せっかくだし”と酒場へ繰り出してみてはいかがか。もしかしたら……!?