「この間、歌舞伎町の客引きについて行ったら、酷い目に遭った。最終的に大揉めして、１０人以上の客引きに追いかけられ、靖国通りで間一髪、タクシーに乗り込みました」と恐怖体験を話すのは、とび職の井原隆氏（３８）。かつての面影が、ほとんどなくなったかに見える浄化された歌舞伎町で、にわかには信じ難い話だ。

「僕も酒を軽く飲んでいたので、声をかけてきたキャッチに“いい店あったら教えてよ”と気安く答えたんですよね。確かに一見して、ヤンチャそうな客引きではあったんですが……。ただ今時、あんなに分かりやすいボッタクリがあるとは思わなかった」（前同）

　そのキャッチは見た目とは裏腹に、気さくに「かわいい子を用意しますよ」と言い、目の前で電話を入れ始めたという。「元コマ劇前というんですかね。ゴジラの近くで、週末の２２時過ぎとかでしたから、人通りもまだ全然あった。そこで“料金は先払いなので、部屋代込みで２万円”と言われた。その場で客引きがレンタルルームに電話して、“お客さん、行きます”と話しているのも聞いていたし、なんの警戒心も湧かなかった」（同）

　だが、いざ予約されたはずのレンタルルームに行くと、部屋代込みのはずなのに、入室料２０００円を要求されたのだという。「そこで、もう払ったと言うと、“聞いてないし、そういうシステムはない”と言われた。おかしいと思いましたが、２０００円程度だし、腑に落ちないまま、部屋に入ったんですよね」

　だが、腑に落ちない話はこれで終わらなかった。しばらく待ってやって来た女は、開口一番「最初に２万円お願いします」と、さらに料金を請求してきたのだ。「もちろん納得いかないですし、腹も立ちました。とはいえ、ここで何もせずに帰ったら、本当にただの取られ損だと思って、やるだけはやろうと（苦笑）」

　井原氏は渋々２万円支払うが、次に女は、それは基本料金で、女が脱いだり、井原氏が女に触れるのは別料金だと、無愛想な態度で言い始めたのだという。「僕もバカだから、最初に、その女に２万円だけは払ってしまったんですが、次々と金を要求されて、完全にブチ切れてしまい……」

　レンタルルームを飛び出した井原氏は、客引きの男を探し、元の場所に戻ったそうだ。男は警戒心もなく、まだ、その場にいた。「僕も酔っ払ってもいましたし、怒りと行き場を失った性欲で我慢できなくなり、声をかける前に、肩を小突いてしまったんです」

　その際、思わず井原氏は「金返せ、この野郎！」と怒鳴っていたのだとか。説明が前後するが、井原氏は根っからの職人で、髪は金髪、服装は龍の刺繍の入ったスカジャン姿。絵的には、いきなり喧嘩を吹っかけた酔っ払いの不良である。